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酵素・生物工学

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 植物や微生物は外的環境に応じて、それぞれが独自の二次代謝機構を発達させてきました。その過程で蓄積された天然二次代謝物質の化学的・構造的多様性は計り知れず、魅力的な生物活性を有する化合物も数多く存在することから、医薬シード化合物の探索資源として、その重要性が強く認識されています。近年では、二次代謝物質の生合成を触媒する「酵素」そのものに注目が集まり、酵素工学的なアプローチや生合成マシナリーの再構築による「有用二次代謝物質の高効率かつ大量生産」ならびに「生理的機能と生合成機構の解明」に向けた生物工学的研究が進められています。

 天然二次代謝産物の生合成マシナリーは生合成関連酵素群により精巧に構築されている一方で、中には寛容で広い基質特異性や潜在的触媒能を有する酵素も多数存在します。そこで、新たな酵素機能の探索・発掘は、高効率な有用物質生産に加え、天然にない新規化合物の創出をも可能にすると考えられます。E. coli (E) 班では、酵素工学・遺伝子工学技術を駆使して、糸状菌が有するシトクロムP450モノオキシゲナーゼを中心に、様々な酵素の物質変換能・物質産生能を探索するとともに、有用・新規化合物の微生物生産を目指しています。具体的には、以下の3つの研究テーマに取り組んでいます。

 

 

 

リコビナント大腸菌にヘムを産生させる

ヘム生合成経路を活性化させた大腸菌によるヘムタンパク質の異種高発現

 ヘムは様々なヘムタンパク質の補欠分子族として機能しています。ヘムタンパク質の異種発現時には、前駆体である5-アミノレブリン酸(ALA)を外来的に添加しますが、経時的なALA枯渇により発現レベルは著しく低下します。 本研究では、紅色光合成細菌Rhodobacter sphaeroidesのALA合成酵素(ALAS)発現遺伝子を導入することで大腸菌のヘム生合成経路を活発化させ、ALAを自前で生産することによるヘムタンパク質発現量の増加に成功しました。 今後、担子菌P450をはじめ様々なヘムタンパク質の異種発現機構を解明することで、ヘム生合成に関与する複数の酵素をALASと同時に活性化させるこが可能になると期待されます。

 

シトクロムP450を利用したモノづくり

真核微生物P450機能をバイオ触媒として活用した有用物質生産

 位置・立体選択的な酸素添加反応が可能であるシトクロムP450酵素を用いた有用物質生産が注目されていますが、多様化した真核微生物P450の中から目的の触媒機能を持つP450を見つけ出すことは極めて困難でした。 本研究では、425種類もの真核微生物P450を酵母に異種発現させた基質変換スクリーニングシステムを構築することにより、目的化合物に触媒活性を有するP450の探索を迅速に行うことに成功しました。これまでに、安価な化学物質や豊富な天然物から難合成化合物を生産するP450を多数発掘しています。 今後は、標的P450の遺伝子改変を行うことでより高活性な酵素を作出でき、医薬品・ファインケミカル合成での応用に期待が持たれます。

 

樹木の生分解に学ぶモノづくり

酵素のナノ近接固定化による協調的触媒反応

 酵素触媒は、厳密な基質・反応特異性や立体選択性を有しており、創薬をはじめとする様々なモノづくり分野で注目されています。しかし、酵素で物質生産プロセスを構築するには、温度やpHなどの影響を抑え、酵素活性を制御し、効率的な多段階反応を実現する必要があり、多くの課題があります。 本研究では、セルロース分解性微生物が有する「セルロソーム」の構造をバイオミメティクス的に模倣することで、複数の酵素をナノレベルで近接させ、基質チャネリング効果による協調的な触媒反応に成功しました。また、セルロース結合モジュールを介して紙に固定することで、リサイクル利用が容易な固定化酵素の開発も行っています。 今後は、酵素の種類や酵素間距離を合目的にデザインし、紙のファイバーネットワーク構造をフロー反応場とすることで、生物機能を用いる多彩な物質生産プロセスへの展開が期待されます。

 

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